なぜマクドナルドのアップルパイは記憶に残るのか?
マクドナルドのアップルパイへの愛は、たぶん理屈じゃない。
ハンバーガーを食べに行ったはずなのに、最後に手が伸びてしまう。
もうお腹はそこそこ満たされているのに、なぜか「アップルパイは別腹」になる。
これはもう食欲というより、条件反射に近い。
まず外側。
あのザクッというより、ガリッに近い歯応え。
パイという名前だけど、実態は揚げ物。
バター感よりも油の力技で押してくる感じが、逆に潔い。
スイーツなのに、どこかジャンクフードの顔をしているのがいい。
中身はとにかく熱い。
初見殺しレベルで熱い。
分かっているのに、ついすぐかじってしまう。
舌をやられて、ちょっと後悔して、それでもまた食べる。
この一連の流れまで含めて、アップルパイの体験なんだと思う。
リンゴのフィリングも絶妙だ。
果物感はあるけど、フレッシュすぎない。
シナモンは主張しすぎず、でも確実に存在している。
家庭のアップルパイとも、洋菓子店のアップルパイとも違う。
あれは「マクドナルドのアップルパイ」という独立したジャンル。
そして何より、いつ食べても裏切らない。
学生の頃に食べた味と、大人になってから食べる味が、ちゃんと同じ。
場所が違っても、時間が違っても、同じ体験ができる。
これは実はすごいことで、工業製品としての完成度が異常に高い。
たぶんマクドナルドは、アップルパイを主役だとは思っていない。
でも、主役を引き立てる脇役としては完璧すぎる。
映画で言えば、主演じゃないのに記憶に残る名脇役。
ハンバーガーで満たされた胃袋に、
「もうひと押し、幸せを足していきませんか?」
と静かに差し出される存在。
派手ではない。
健康的でもない。
でも、確実に人の記憶と感情に残る。
それが、マクドナルドのアップルパイ愛の正体だと思う。

